集客が伸び悩むのはそもそもの「組織構造」問題!?営業>広報の組織構造は要注意!?
2023/08/12目次
はじめに
皆さん、こんにちは。
株式会社SHO-SANの高谷です。
今回お伝えしていくのは、工務店の組織戦略についてです。
工務店のマーケティングが上手くいかないとき、どうしてだろうと突き詰めていくと、まず根本的にこの組織戦略に問題があることが御座います。
いくらマーケティング会社を入れてもコンサルティングを入れてもうまくいかない……という工務店は、その「組織構造」に目を向けてみることを是非おすすめします。
「営業>広報」の集客組織はうまくいかない!?
工務店領域に限らず、不動産業界の組織は、往々にして「営業部」の力が強くなりがちです。営業部は、業績の直接の立役者であり、重要なポジションであることに間違いないのですが、総務や工務など営業以外のその他の業務においても、営業部の発言力が強くなりすぎていませんでしょうか?
とくにそれが顕著に現れるのが、広報と営業部の組織構成です。ここの発言力の差が大きければ大きいほど、集客改善がうまくいかなくなる可能性があると私は考えています。
いくつかその現象に関してご説明できればと思いますが、大前提、営業部の発言力が強いことは悪いことでは有りません。私はあくまで時たまそれが集客改善のボトルネックになっている可能性があることを指摘しているだけだとご理解頂きたく思います。
「営業>広報」のデメリット①集客の“PDCA”が周らない
マーケティング戦略に対して営業の発言力が強すぎると、まず集客戦略のPDCAが回らない事態が起こります。
集客とは、計画・実行・検証・改善の繰り返しの末に、成果が上がるものです。企画して、やってみて、失敗して、改善して……その循環によるデータと経験の蓄積こそが、集客戦略を練る上での基盤となります。
営業部が強い組織で起こりがちなのは、企画や改善の途中で、営業部からの“口出し”が入ることです。
何度も断りを入れさせて頂きますが、日々、現場で顧客と対峙している営業担当者のアイデアや見解は、集客戦略において非常に重要であることは間違いありません。しかし、営業担当者の“口出し”に引っ張られすぎてしまうと、PDCAの円滑な循環に支障をきたすことになりかねないということです。
営業と広報には「思考」の違いがある
営業職が集客を考えるときの思考は、往々にして「打ち手ベース」であることが多いものです。どういうことかというと、「現場での思いつき」や「これやってみたい」という発想だけで集客戦略を考えてします傾向が強いといことです。「いいお宅が建ったから見学会やろうよ」
「オンライン見学会のほうが集客できるみたいだよ」
たとえば営業発信であると、このような発想で集客戦略が決まってしまうこともよくある話です。もちろん営業担当者の発想は、ひとつ“案”として非常に重要です。現場でしか体感できない、顧客のニーズや業界の流れのようなものはあるはずです。
しかし先述通り、集客戦略で重要なのはPDCAの循環です。この循環を円滑にするためには、「打ち手ベース」ではなく「課題ベース」による企画と検証が不可欠となります。打ち手を講じる以前に、集客できなかったときとうまくいったときのデータを集め、比較し、集客における課題を改善するという一連の流れを止めないことが、集客戦略ではなにより重要になってきます。
「営業>広報」のデメリット②コストがかかる上に成果が安定しない
営業担当者の「打ち手ベース」で集客戦略を進めていくと、ひとつの施策に集中できません。毎回毎回、違う施策を行うことで、集客コストも高くなってしまう場合があります。
さらに、各々の施策は毎回ゼロからのスタートとなることで、成果も上がりにくいといえます。
集客は「挑戦」ではなく「安定」を追求すべき
「これやってみよう」「今度はこっち」という打ち手ベースの集客は、言うなれば毎回が“挑戦”です。実証データがない施策をゼロから始めるには、コストがかかるのはもちろん、成功する可能性も0か100。私は基本的に、集客とは「70点取れる施策」をいかに積み重ねていけるかだと考えています。0か100の施策を継続して「当たればラッキー」なのではなく、それぞれの施策を一定の成果が見込めるラインまで確実に上げていく工程が集客戦略です。
「0か100か」の集客では、会社も人も、精神も売上も、不安定になってしまうことでしょう。赤点の施策をなくしていくための「課題ベース」の戦略こそが、“安定”した集客の追及の足掛かりとなります。
「営業>広報」のデメリット③“負のスパイラル”へ
「営業>広報」この構図で集客戦略を進めていくとなると、どんどん“負のスパイラル”に陥っていきます。
本来であれば、「計画」「実行」「検証」「改善」の4つを循環させていくべきところが、営業部からの「提案(計画)」と広報部署の「実行」のみしか繰り返されなくなるからです。
しかも「計画」と「実行」をする者同士には、そもそも思考の違いがあります。それにも関わらず、うまくいかなかったときには営業部からの「じゃぁこうすれば?」「こうしてみよう」という提案を受け、それをそのまま実行していくとなれば、もはやこれは「戦略」とはいえません。集客戦略が、単に営業部の打ち手ベースの発案をそのまま実行している「単独の施策」の繰り返しになってしまうのです。
「要求を満たしてもらう」のみならず「研究」していくべき
例えばですが、有能な料理研究家(=広報)がいたとしましょう。料理研究家は、発想と研究を繰り返してこそ、「おいしい料理が出来上がる」という成果が得られるはずです。それにもかかわらず、料理をを待っている(営業部)お客様が「リンゴ食べたい」「チャーハン作って」と突発的な要望を繰り返していると、料理研究家はその手腕を発揮できず、宝の持ち腐れになってしまう恐れがあります。
料理研究家は、研究してこそ本領を発揮できるものです。広報部署もまた、集客を研究してこそ本領が発揮されます。「この食材を使ってみたら?」「これおいしい!」という提案や感想は、研究を進めるためのひとつの大切なエッセンスにもなりますが、周りからの意見にばかり引っ張られていては、目的である“おいしい料理”は生まれないのです。
集客戦効果を最大化させるための組織構造
私が言いたいのは、「営業は広報に口出しするな」「双方が関わるな」ということでは決してありません。
再三申し上げている通り、現場の声は、集客戦略を進めていくにあたり非常に重要です。リアルの声、リアルな反響を聞けるのは、営業だけ。これは必ず集客戦略に活かさなければなりません。しかし、広報部署が営業の声をそのまま“鵜呑み”にしなければならない組織の構造が、集客戦略を進める上では良くないのです。
広報と営業を分離すべきではない
ここまで説明してきた「良くない組織構造」は、下記図の左です。広報と営業の合わさるところだけで“営業色”の強いマーケティングをしていては、成果はなかなかあがりません。「営業の要望は絶対」ではなく、広報部署は独自でPDCAの循環を回しつつ、営業の声を適切に集客戦略に取り込む構造が、工務店には求められます。そのためには、営業のニーズを理解してうまく集客戦略に落とし込む「仲介者」の存在が不可欠になるでしょう。仲介者は、上記右の図のように広報と営業、両者に跨いで配置します。そして、広報は広報で独自でPDCAを回す施策を行い、営業の要望や提案は仲介者=マーケティング責任者に上げてもらってそこから広報に下ろすことで、営業の言葉を鵜呑みにしない集客戦略が可能となります。
「トップ」の役割
マーケティングを先導する仲介者には、営業経験者かつマーケティング知識を要している人が適任でしょう。とはいえ、「そんな人材いないよ!」という工務店さんのほうが圧倒的に多いことと思います。そこで私がおすすめするのは、社長が営業と広報の間に入ることです。工務店の社長の多くは営業経験者、あるいは現役で営業している人であり、集客の重要性も理解しているものです。「営業経験」というのは、工務店の集客には不可欠な要素だといえます。たとえば、「建て替え層を集客したい」と営業側が要望を出したとき、営業経験がない人は「建て替え宅の見学会をする」くらいの案しか思い浮かばないでしょう。しかし、「なぜ営業側が建て替え層の集客をしたいのか」と経験則から考えることができれば、建て替え層=「上物だけに予算をかけられる人」「予算が潤沢な人」だと推測できる場合もあります。その結果、「販促物のデザインに高級感を出してみよう」や「高所得者が集客できれば、建て替えにこだわらなくてもいいのでは?」といった考えにまでいたることができるかもしれません。
つまり、広報側に営業経験があれば、営業が出した「打ち手ベースの提案」を聞いた時点ですでに課題が見えるということ。さらにトップは、今の集客戦略の状況を把握しているため「今やるべき施策なのか」の判断もできます。
営業と広報を分離するのではなく、ただ一人、両者のことがわかる仲介者を配置するだけで、双方の潤滑油となり、営業側の意見を集客戦略に最大限活かせる構造ができるのです。
まとめ:営業とマーケティングの「連携」を深めるために組織構造を見直すべき
営業の言葉を鵜呑みにするのではなく、その背景にあるニーズを広報側が察知できれば、ますます両者の連携は図られていき、集客効果も高まります。
そもそも営業とマーケティングは、連携を強固にすべき。営業からマーケティングを切り離すのではなく、営業の要望や提案をうまく集客戦略に取り込むために、「広報より営業が強い」という構造を見直す必要があります。改善策は、営業のニーズを集客戦略に落とし込む責任者のポジションを設けることです。中小工務店では、このポジションに最適なのは社長になるでしょう。
組織の構造だけでビジネスチャンスを逃している工務店は、決して少なくありません。予算を割いてコンサルやマーケティングを依頼する前に、今一度、組織構造を見直されてみてはいかがでしょうか。
それでは、工務店領域のマーケティング機能発展を祈って。
株式会社SHO-SAN
代表取締役社長 高谷一起